録音

ホールの音響をやっていると、実に様々な録音メディアが持ち込まれます。
カセットやCD、MDなどがほとんどですが、その中には録音品質があまり芳しくなく、ノイズだらけだったり余計な音が入っていてしまったりするものがありました。
そこでここでは、上手な録音のテクニック、機器の接続、機器のメンテナンスなどについて述べようと思います。

録音レベル

テープやディスクなどに記録するときの音量設定を「録音レベル」といいます。

録音品質の善し悪しは、ほとんどこの録音レベルによって左右されてしまいます。
ラジカセなどではこのレベルは自動的に調整されてしまうものが多いですが、録音レベルを手動で設定できる機器を使用している場合は、その機能を積極的に利用しない手はありません。
この設定は、アナログ録音機とデジタル録音機ではちょっと異なっています。

アナログ録音機(カセットテープなど)は、テープなどのメディア自体のノイズがあるため、メーターをできるだけ多く振らせるようにします。ただし、 あまり振らせ過ぎると歪んでしまうので注意が必要です。
音の大きなところで、メーターの「0VU」を少し超えるくらいに設定するとよいでしょう。
 「PEAK」などのランプがついている機器の場合は、PEAKがたまに点灯するくらいがよいです。


一方デジタル機器(MD、DAT、CD−Rなど)の場合は、メディア自体のノイズは気にしなくても良いため、あまりメーターを振らせなくても大丈夫です。
逆にメーターを振り切らせてしまうと歪んだりする場合があるので、PEAK(瞬間最大レベル)の時でもメーターが振り切らないように注意が必要です。

カセットテープには、「Normal」や「CrO2」「Metal」などの表示がありますが、これはテープに塗布されている磁性体の違いです。
それぞれ、バイアスレベルやイコライザーの時定数(詳しいことは割愛します)が違いますので、それぞれのテープにあった設定を選択しなくてはなりません。
録音機器によっては自動でセットされるものもありますが、右の写真のようなテープデッキの場合は、選択スイッチで選択しなくてはなりません。(中央の3個のオレンジ色のボタン)

一般に、Normal→CrO2→Metalの順で「音がいい」とされていますが、NormalよりCrO2の方が高音の抜けがよい代わりに歪みやすいと言う性質があります。(最近は大分改善されているらしいが・・・)
Metalはダイナミックレンジ(テープの固有ノイズに埋もれてしまわないくらい小さい音から歪むまでの音量差)が広くヌケもよいのですが、テープ自体が高価ですし、ラジカセなどでは対応していない場合があるので注意が必要です。


ノイズリダクション・システム

カセットなどのアナログ録音機の場合は、「Dolby NR」と言うスイッチが付いているものがありますが、これは「ノイズリダクション」と言うものです。

前述したとおりアナログ録音機の場合はメディア自体の固有ノイズ(ヒス・ノイズ)があるため、これを少しでも軽減しようと考えられたものがノイズリダクションです。

「Dolby」と書きましたが、これは英国のDolby研究所が開発したシステムで、一般に広く使われています。(Dolbyサラウンドとは別物)
プロ用のA、民生用のB、Bの改良型のC、Cをさらに改良しプロ用としたSRと4種類ありますが、それぞれ互換性はありません。
基本的な原理は、録音時にノイズが目立つ高音域を増強し、再生時に高音域を減衰することによってノイズを減らそうと言うものです。

Dolbyの他にdbxと言うノイズリダクション・システムもあります。
これは、録音時にダイナミックレンジを2分の1にし、再生時に2倍に伸長する事によってノイズを軽減しています。

このようにいろいろなノイズリダクション・システムがあるので、録音時に何を使用したかテープ自体に明記することが肝要です。

また、ノイズリダクションを使用するときはレベルあわせやバイアス、イコライザーの設定をきちんとやらないと本来の性能を発揮できないばかりか、こもった音になったり音量の変化が不自然になってしまったりする場合があります。
テープ選択スイッチの他に、バイアスやイコライザーが手動で調整できる機器の場合は、その機器の説明書に従って積極的に調整するようにしましょう。

録音モニター

主にアナログ録音機の場合には、録音しながら同時にテープに録音された音をモニターできるものがあります。

これは「3ヘッド方式」と言って、磁気ヘッドが3個ある録音機固有の機能です。
テープは、まず始めにテープを初期化する「消去ヘッド」を通過し、「録音ヘッド」で記録され、「再生ヘッド」でモニターされます。

何度でもやり直しができる場合は良いのですが、ライヴ録音などは一度限りで失敗することはできません。
同時モニターができる機能が付いた録音機器の場合は、必ずモニターをしながら録音するべきです。

なお、右の写真を見てもお分かりだとは思いますが、録音ヘッドと再生ヘッドは全く同じ位置にありません。ほんの数mmですが、ずれているのです。
テープは写真左から右方向へ走行しますので、再生された音は原音からちょっと遅れたものになります。
カセットテープは秒速4.8cmですので、5mmずれていれば約0.1秒遅れることになります。
このくらい遅れると、原音と混ざるとエコーがかかったように聞こえてしまいますので、モニターはなるべく密閉型のヘッドフォンで行うと良いでしょう。

オープンテープデッキの場合には、録音・再生ヘッドは数センチ離れているので、音の遅れ方はさらに顕著です。(ただ、テープスピードは約4〜8倍速い)

余談ですが、この原理を利用したものが「テープエコー」です。
録音ヘッドの後に再生ヘッドを数多く配置し、それぞれのヘッドの再生音量を徐々に下げていくことによってエコー効果を得ています。

機器の接続

録音機器で録音するときに使用する音源(ソースと言う)は、マイクによる収録であったり、ミキサーなどの出力であったり、CDなどの再生機器出力であったり様々です。


基本的に録音機器には「マイク入力」と「ライン入力」の2種類が装備されています。

マイクはそのままマイク入力に接続すればよい(変換コネクターが必要な場合や、コンデンサーマイクはファンタム電源が必要な場合もある)のですが、ライン入力は民生用と業務用途では扱う信号のレベルやインピーダンスが違う場合があります。
コネクターのコーナーでも書きましたが、RCAコネクターはRCAコネクターへ、XLR(キャノン)コネクターはキャノンコネクターにつなげば概ね間違いはありません。

基本的にRCAコネクターは−20db、XLRコネクターは+4db用なので、+4db出力のミキサー出力などをRCA受けの録音機などにつなぐときは、アッテネーターなどを入れないと歪んでしまう場合があります。
録音レベルつまみで調整してレベルメーターの振り方を適正にしても、録音機自体のヘッドアンプで歪んでしまい、録音されたものは歪みだらけ・・・と言うこともあります。

必ず、ヘッドフォンをつないでチェックし、アッテネーター(録音機器の入力コネクター近くに入力レベル切り替えスイッチがあるものもあるが、外付けアッテネーターが必要な場合もある)などで信号レベルをあわせましょう。


メンテナンス

録音機は録音メディアと録・再ヘッドが接触しているもの(テープ)と、レーザーなどの光を用いた非接触式のものがあります。

いずれにせよ、メディアから正しく信号をやりとりするためには、その出入り口であるヘッドやテープを走行させるための装置のメンテナンスが必要になります。

アナログ録音機(カセットデッキなど)の場合は、綿棒に専用のクリーニング液やエタノールをつけて、丁寧に各ヘッドやキャプスタン(テープを走行させるためのゴム製のローラー)を拭きます。
このときあまり力を入れると、ヘッドを傷つけたりアジマス(テープに対するヘッドの傾き)をずらしてしまうこともあるので注意しましょう。

テープを使用したデジタル録音機(DATなど)の場合には専用のクリーニングテープを用い、決して綿棒などでクリーニングしてはいけません。
デジタル録音機やビデオデッキに用いられている回転ヘッドは非常に精密ですので、綿棒などでとうていクリーニングできるものではなく(プロの録音スタジオではやる場合もあるが・・・)、逆に壊してしまうことにもなりかねません。

クリーニングテープには湿式と乾式とがありますが、湿式の場合にはクリーニング液のつけすぎに注意し、乾式の場合には使いすぎに注意しましょう。
乾式クリーニングテープは、ヘッドをすり減らすことによってクリーニングしています。
デジタル録音機の回転ヘッドの場合には、通常の記録テープにも若干ではありますがこの機能が備わっています。
回転ヘッドは、わずかずつすり減らしながら使うことによって表面とギャップを常に適正な状態に保つようになっているのです。
定期的なメンテナンスと共に、ヘッドの定期的な交換・走行系のメンテナンスなどをメーカーに依頼するのが理想的です。

ディスクレコーダーの場合には、メディアとヘッド(レンズ)は直接接触していないので、テープ録音機のようなメンテナンスは必要ありませんが、定期的に専用のクリーニングディスクなどを用いて、常にレンズをクリーンにしておきましょう。
それ以上は、メーカーに依頼してメンテナンスしてもらうしかありません。

ヘッドや走行系のメンテナンスの他に重要なのが、コネクターのメンテナンスです。
各入出力コネクターをヘッドクリーナー(金属用)かエタノールを、綿棒やガーゼか専用のクリーニング棒に付けて拭ってやります。
ヘッドフォンジャックなどの中に、綿棒の繊維などが残らないように注意しましょう。

録音時間の確認

ライヴなどの録音をする前には、全体の時間と一曲ごとの時間を確認しておけば、「テープが足りない!」などという失敗を少なくすることができます。


我々がホールで録音を依頼された場合、必ず複数本のテープを持ってきてもらうようにお願いしています。
というのは、講演などの途中でテープをひっくり返す時の「無録音部分」をなくすために、一本のテープの片面が終わりそうになったらもう一本のテープをスタートさせ、ダブらせて録音するのです。
2台の録音機が必要になりますが、こうすることによって講演内容を漏らすことなく記録することができます。

ピアノ発表会などの録音の場合には、一曲ごとの演奏時間をあらかじめ聞いておかないと、曲の途中でテープが終わっちゃった・・・なんて事にもなります。
ちびちゃんたちの短い曲だったらよいのですが、上級者の演奏する曲は一曲10分なんていうのもざらです。
講演と違い、曲の途中でテープが入れ替わってしまっては音楽の記録としては失格です。
ダブる部分が増えてしまい、実際の演奏時間以上のテープが必要になってしまいますが、音楽の録音にはそういった用意が大事です。

カセットテープには10〜120分用まで様々な長さのものがありますが、基本的に90分以上のものはテープ自体が薄く、走行系に巻き込んでしまったり録音レベルが不安定になったりしますので、なるべく使うようにしない方が賢明です。
うちの小屋の場合は、90分テープまではOKにしています。120分は非常にテープが薄いので、基本的にお断りしています。

MDの場合は、TOCリード/ライトの時間がかかるので、録音時間の確認に、さらに注意が必要です。

一部の機器に装備されているMDのLPモードは、機器によっては再生できない場合があるので使わない方がよいでしょう。
 
 


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