カラーフィルター
カラーフィルターについて
照明光源から発せられる光には、いろいろな波長の光が含まれています。
このうちから、ある特定の波長の光のみを通過させ、「色」として見せるのがカラーフィルターの役目です。
カラーフィルターは、セロファン紙を想像してもらうとよいでしょう。もちろん、材質や耐久性は違いますが、見かけは似ています。
その他にも「ダイクロックフィルター」と言う、干渉格子を利用したカラーフィルターもありますが、ここではいわゆる「色」についてお話ししようと思います。
「セロファン紙とは似て非なるもの」と書きましたが、では材質は何でできているかというと、昔はゼラチンに色素を溶かし込みフィルム状にしたものを使用していました。(さらに昔は、水に染料を溶かしフラスコに入れて使用した時代もあったらしい。)が、これは水分に弱いことや破れやすいという弱点がありました。(反面、裁断するときには、折り曲げてその折り目を舐めると簡単に切ることができた。)そのため最近ではすっかり姿を消し、プラスチック製(ポリアセテートやポリカーボネートなど)のフィルムが使われています。
以前の製品では、フィルム表面に色素を塗布していたため、ガムテープなどで固定するとそこの色素がはがれてしまうものもありました。
「カラーフィルター」と言うからには、そのフィルターが何色なのか(どの波長の光を透過するか)が判別できなければなりません。
そのためにカラーフィルターには「色番号」と言うものがつけられています。赤や青などの色の名前では呼びません。
一例として、日本で一般的な2桁の数字による表記法を紹介します。
この分類法は、昭和初期に遠山静雄博士が提唱したものだと言われています。
10 | 20 | 30 | 40 | 50 | 60 | 70 | 80 | 0 | 00 |
ピンク | 赤 | 橙 | 黄 | 緑 | 青 緑 | 青 | 紫 | 透 明 | 半透明 |
さらにこの中で、色の濃いものから順に一桁目の数字が増えていきます。(例えば、71→濃い青・78→うすい青)
ただ、各色とも0〜9まで常備してあるわけではなく、大体よく使う色というものは決まっています。
一例として、ピンクなら18、赤なら22,橙(アンバーと言う)なら35,黄色なら40・・・などです。(異論は多々あると思いますが・・・あくまで「一例」として・・・^^;)
この表記法は、ポリカラーやクリンカラーなど国産の色の表記に使われています。
この他にウルトラカラーや外国製ではリーフィルターやロスコカラーなど、それこそ色々な種類の色があり、それぞれに微妙に色調が異なり、また表記法が異なります。
ICFD(International Color Filter Designation)と言う、科学的な理論に基づいた表記法を用いることも提案されてはいますが、現時点ではあまり定着していないように思われます。
照明家は、このように多彩な色の中から目的にあったものを選ばなくてはなりません。
例えば利用者から、「バックの色をオレンジにしてください。」などと言われると、「暖かい感じにしたいのかな?それとも夕焼けのイメージなのかな?」と悩んでしまいます。
ひとくちに「青」と言っても、青空なのか夜の場面なのかで使う色も違います。
なので、直接色を指定するよりも、どんなイメージにしたいかを照明家に伝えることが肝要です。
色温度について
色温度という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか?
すべての光源には「色温度」と言うものがあります。
身近な例として、蛍光灯と白熱電球の光を見比べてみてください。 白熱灯より蛍光灯の方が白く見えませんか?
小学校のときにろうそくの火の根本と先端で色が違うのは、温度が違うからだと言うのを教わったと思います。 これとほぼ同じことです。
舞台で使う照明光源はハロゲン(各種スポット類)やクセノン(ピンスポット)、メタルハライドなどですが、それぞれ色温度が違います。
ハロゲンランプは概ね3000K(ケルビン)前後、クセノン/メタルハライドは6000K前後です。(因みに、蛍光灯(昼光色)は6770K、太陽直射光は4870K)
なぜカラーフィルターのコーナーで色温度を問題にするかというと、同じカラーフィルターを使っても光源の種類によって色が違って見えるからです。(色温度補正用フィルターというものもあるが・・・)
このことは照明のデザインをするときには重要で、蛍光灯はハロゲン光源に較べて色温度が高いため、蛍光灯の下で色を選んでしまうと、実際に舞台で照明器具にセットしたときに違う色調になってしまいます。色を選ぶときはなるべく実際に使用する光源の色温度に近い光源を使うようにします。
三原色
三原色と言う言葉をご存じですか?いろいろな色を創り出すときに、基本となる色のことです。
絵の具の場合には、青・赤・黄(だったよね・・・^^;)で、その3色を等分ずつ混ぜると黒になってしまいますが、そのバランスを変えると様々な色が作り出せます。そのようにしてできた色を「中間色」と言います。
照明の場合には、「光の三原色」と言って、R(レッド)・G(グリーン)・B(ブルー)の3色です。太陽光をプリズムで分光すると、その3色に分かれるのはご存じだと思います。(ピンク・フロイドの「狂気」のジャケット・・・古いか・・・ ^^;)
逆に、その3色を混ぜると白(無色)になります。(原理的に・・・^^;)
舞台照明では、主にホリゾントライトでその効果を利用します。 某ホールの例として、アッパーホリゾントライトには#71/#72/#86/#78/#63/#59/#22/#W、ロワーホリゾントライトには#72/#73/#77/#78/#59/#40/#22/#Wと言う組み合わせで使用しています。 #Wとは、色を入れていない状態です。(ナマと言う)
こうしてみると70番台(ブルー)が圧倒的に多いのにお気づきでしょう。 なぜかというと、ブルー(特に#71/#72など)は明度が低いため乗りが悪く、他の色とのバランスが取れないからです。